| あの二日間の出来事、ひとつめ 再会 ある朝、誰かが私を呼んでいる気がして、私は目を覚ましました。
「シアーッ!シーアッ!おっはよー!」
・・・・・・マリーです!マリーの声です!
私はパジャマのまま上着だけを羽織り、慌てて玄関へ出ていきました。そして扉を開けました。・・・・・・すると、天気の良い晴れ上がった空の下、マリーが、いつもの、温かく屈託のない笑顔で、私を出迎えてくれました。
「えへへ。おはよっ。」
その笑顔を見ると、何か私の中にあった、わだかまりみたいなモノ? ちょっと違うかも知れませんが、そういう類のつまらないモノがすうっと消えていき、今まで逢えなかったことなんかどうでもよくなってしまいます。
「うん。おはよ。」
私も、挨拶を返しました。
「あのね、シア。」
「なぁに?」
「私、明日出発なんだ。」
「えっ・・・・・・そう・・・なの・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・それでさ、準備もさ、一応、片づいたんだ。・・・だからさ、あの・・・今日は一日中遊ぼうよ・・・・・・どうかな?」
「!!・・・・・・ええっ! うれしいっ! マリーの方から会いに来てくれるなんて!」
・・・私ホントに嬉しくて、思わずマリーに飛びついてしまいました。マリーは、有名になっても、ちっとも高飛車にはならず、その性格が変わらないのが、本当に嬉しかった。
「ちょっ、ちょっとシア?こんなとこで、抱きつかないでよぅ。恥ずかしいじゃないの。」
「いいじゃないの、これくらい。誰も見てないわよっ。」
「・・・・・・あのー。」
「??」
「私らって邪魔?」
「・・・!!・・・ミューさん!!・・・いつからそこに?」
「さっきからいるわよ。ねぇみんな。」
「みんな?・・・・・・!!」
その時私は気づきました。そこには沢山の人が私たちの周りにいることに・・・・・・・・・・・・。私ったらマリーしか目に入ってなかったのね。
ここで人物紹介をしましょうか。知っている人は適当に聞き流して下さいね。
まずは、ミュー・セクスタンスさん。銀髪のショートヘアに、南の生まれ故の褐色の肌、そして、何処か抜けたような顔。でも、気性の変化は激しく、とても行動的。
・・・なんか、マリーと似てるかも知れませんね。南国生まれのせいで、この街へ来たときは、寒くて相当苦労したようです。この街も寒くはないんですよ。冬でも雪なんか滅多に降らないし、それどころか、コートも要りません。まぁでも、生活環境が急に変わると誰しも、体調を崩すようですけどね。でも、私たちの心配をよそに、アッという間に気候に順応してしまいました。この辺はさすが冒険者と言ったところでしょうか?
普段はみんな「ミュー」とか「ミューさん」とかよんでいます。あぁ、言い忘れました。もう分かった人もいるかも知れませんが、この人はいわゆる冒険者です。
あ、もう一つ・・・、女性です。名前で分かるかも知れませんけど・・・。
つぎに、ルーウェン・フィルニールさん。この人も冒険者です。男性です。茶髪です。ロングではありません。ショートです。プロテクターのついたバンダナと、胸甲の厚い鎧を身につけ、マントを羽織っています。顔は何処か幼く人なつっこいです。
この人は昔離ればなれになった両親を見つける為に、冒険者になって各地を渡り歩き、今はここ「ザールブルグ」に落ち着いています。
そして、クライス・キュールさん。蒼い髪、眼鏡の奥の碧眼、自信たっぷりの表情。マリーに言わせると、「嫌みったらしい」となるわけですが・・・・・・。まぁそれでもマリーは一応クライスさんのことを理解してないと言うわけではないようですけどね・・・・・・。
この人はアカデミーの主席で、とても頭の良い人です。でも性格は悪くて、他の生徒達からは嫌われていたようです。ただそれも昔の話で、今では、マリーの性格に影響されたのか、だいぶ人当たりが良くなってきたようです。でもまぁ、それでもまだ普通の人と比べるとなると・・・・・・。
まぁそれはおいといて・・・・・・、クライスさんは、マリーのことが好きみたいです・・・・・・。でも、その気持ちをまだ伝えてはいないようです・・・・・・。
・・・・・・とまぁ、こういった顔ぶれでした。
そして、その日は朝から街へ出て、いっぱいいっぱい遊びました。お散歩したり、お買い物したり・・・・・・とても楽しかった。でも、楽しいときほど早く過ぎていってしまうものです。
あっという間に時は過ぎ、街中に日没を知らせる鐘が鳴り響きます。もう別れの時です。ルーウェンさんとミューさんは呆気なくと言うか素っ気なくと言うか、普通に帰って行ってしまいました。これが出会いと別れの多い冒険者さん達にとっては普通なんだろうとも思いましたが、私も、もう二度と逢えなくなるわけでもないのだし・・・とも思っていました。でも、ルーウェンさんとミューさんが帰るのと一緒にクライスさんもさっさと帰っていこうとしていました。
だめよ、このままじゃ! このままでいいはずがないわ! ・・・私はそう思い、クライスさんを呼び止め、駆け寄っていきました。
「いいの?このままで?もうマリーには暫く逢えないかも知れないのよ?」
「・・・・・・ええ、いいんです。これで。」
「どうして?自分の気持ちも伝えないままで、どうしていいの?絶対後悔するわ。」
「そうかもしれませんが・・・・・・。」
「だったらどうして?」
「・・・・・・それがマルローネさんの為だと思ったからです。」
「!?」
「マルローネさんは、これから厳しい旅に旅立たなければならないのです。そんなときにこんなことを言っては・・・・・・どちらにしても、彼女にショックを与えます。そんなことはしたくないのです。」
「・・・・・・でも、旅の途中で苦しいときとかあったとき・・・・・・そんなとき待ってくれている人がいると思えば、それが励みになるんじゃないの?」
「ふふっ。あなたはやはり友達思いのいい方ですね。それじゃ最初の私の為というのは?」
「あっ・・・ごめんなさい・・・・・・いや、でも、だからこそという意味で・・・・・・。」
「ふふふ。冗談ですよ。別にあなたを責めてるわけじゃないんです・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「それに・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・?」
「マルローネさんの一番の心の支えはあなたなのですよ。2人きりでお別れをしてあげてください。」
クライスさんはマリーの方をちらりとみて、そう言いました。マリーを見つめるその目は、何かを悟っているような、真っ直ぐにものを見つめる、瞳なのでした。私はその瞳をを見、その言葉を聞き、大分戸惑ってしまいました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは、
「ちょおっとぉ、なに話してンのぉ? ねぇ?・・・・・・あれ? シア? どうしたの? ・・・・・・・・・・・・ま・さ・かぁ! ・・・・・・クライスぅ! あんた、シアになんかひどいこと言ったわねぇっ!?」
「まさか、私がそんなことをレディに対してすると思いますか?」
「思うわよっ! あんた、私に対してしてきたこと忘れたの!?」
「あなたがレディですか?」
「・・・・・・っ!! むっきぃー!!! あーもう腹立ったぁー!! さっさとどっか行けぇー!」
「ふふっ。言われなくともそうするつもりでしたよ。そもそも・・・
「は・や・く・い・け!!」
「ふふ。では失礼。」
そしてクライスさんはサッと向きを変え、帰っていってしまいました。さっさと、実にあっけなく・・・・・・。
「あー、もうホント最後までむかつく奴だったわね。さあ、もう大丈夫よシア。」
その時私はまだ迷っていました。そして、やっぱり言うべきだと思いました。
「あのね、マリー・・・・・・
そこへ、さっき私に対して話してくれたときのクライスの真っ直ぐな瞳が頭に浮かびました。あの瞳は・・・あの真っ直ぐな瞳になれるのは、苦悩し、考え抜き、自分なりの答えを出したからこそ出来る瞳なのでしょう。そうまでして人の決めたことに私が口を出す権利なんて・・・・・・そう思った瞬間、私は開きかけた口を閉じてしまいました。
「どうしたのシア、なんかさっきから変だよ?・・・・・・!! もしかしてどっかぐあいが悪いの!? ねぇ、大丈夫!?」
「大丈夫・・・・・・ねぇ、マリー。もうちょっとお話がしたいんだけど・・・・・・いいかしら?」
「!? う、うん、いいよ。なんなら、一晩中でもオッケーよっ!?」
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